【教職員インタビューVol.3】全員がスーパースターになれなくても、音楽は絶対に人生を豊かにする!バークリー留学で学んだ知識と経験を、TSMの講師として還元している卒業生【金子勝洋先生】

東京スクールオブミュージック&ダンス専門学校 講師 金子 勝洋先生
▼音楽との出会いと、TSMを選ばれた経緯を教えてください。
音楽との本格的な出会いは高校時代のカリフォルニア留学でした。友達ができない悩みを学校の先生に相談したところ「ランチタイムで何かパフォーマンスしてみないか」と言われ、人前で初めて歌う機会をいただきました。それをきっかけに友達が増え、音楽を通じて人とつながる素晴らしさを実感しました。
帰国後の進路選択では、進学校だったこともあり、高校の先生には大学を薦められました。しかし家族が「今、挑戦したいことがあれば何でも挑戦してみなさい。」と後押ししてくれて、TSMのバークリー留学コースに出会いました。バークリー編入時の全額奨学金制度を利用できる場合があるということも魅力の1つでした。そうして私は2期生として入学し、TSMから1人目として、バークリー留学をさせていただくことになりました。

▼バークリー音楽大学ではどんなことを学びましたか?
世界有数の音楽大学であるため、技術面はもちろんですが、音楽を学問として深く学べたことが大きかったです。例えば「African Diaspora(アフリカ系音楽文化史)」という授業では、アフリカ系アメリカ人ルーツの全ての音楽を学び、ゴスペルならそのルーツであるアメリカの奴隷制度の歴史までしっかりと学習しました。それぞれの音楽の起源や、文化的背景の知見が深まったことは大きな収穫でした。
また、自ら学ぶスタンスを重視する教育システムも印象的でした。自分で文献を探し、ファクトチェックを受けながらエッセイを書いてアウトプットする授業では、かなり鍛えられました。この学びを取りに行く力は教員になった今でも、何か知識を得たいと思った時に自分自身の学び方の核となっていますね。

▼留学中に直面した困難と、それをどう乗り越えたのか教えていただけますか?
最大の困難は技術的な差でした。自分は音楽を始めて3年目でバークリーに行ったため、世界各国から集まった10年以上の音楽経験のある学生とは圧倒的な差がありました。オーディションに8回連続で落ちた時は、本当に挫折しそうになりました。
そんな時に救われたのが、ある友人との出会いでした。その友人は音楽が心から大好きで、暇さえあれば自分の好きな音楽を楽しんでおり、他人と比べることが全くありませんでした。私がオーディションに落ちたと話しても「へえ、そっか」と言うだけで、慰めてくれるわけでもない。でもそういう純粋さに触れて「音楽ってこういう風に、大好きなことを突き詰めればいいんだな」と気づくことができました。
心から音楽を愛している人たちとの出会いを通じて、オーディションに受かる、デビューできるという目先のことよりも、どうやって音楽と一生付き合っていくのかというマインドが大切であることを学びました。

▼TSM在学中の印象的なエピソードを教えてください。
世界的に有名なアカペラグループ「ペンタトニックス」の番組で日本代表ヴォーカリストに選出していただいたことです。世界各国の若いシンガーがリレー形式で共演する企画に、TSMを通じて参加することができたのです。
渋谷スカイや電車を貸し切っての撮影など、大きなプロダクションのスケール感に驚きました。完成された動画は登録者数1億6千万人以上のDisney+で配信され、学生の身では考えられないような貴重な経験をさせていただきました。
何より技術力よりも「君の音楽に対するパッションやエネルギーが良いね!」と評価していただけたことが嬉しく、自分一人では絶対に得られなかったチャンスをTSMを通じて得られたと感謝しています。
▼授業で特に大切にしていることはありますか?
大切にしていることは2つあります。
1つ目は、バークリーの授業を参考にして、プレゼンテーション形式を取り入れていることです。作曲した作品は必ず全員の前で発表してもらいます。音楽は「誰かに届けてなんぼ」だと思うんです。最初は緊張しても、発表を重ねることで他人からの評価と上手く付き合えるようになり、自信を持って音楽を届けられる強さを身につけて欲しいと願っています。
2つ目は、学生一人ひとりに寄り添うことです。バークリーでは「オフィスアワー」と言って自主的に先生に質問することができる時間が確保されています。私自身も授業で難しいと感じたことがあった時、他の生徒に追いつけない時、授業内容について質問したいことがある時、時には雑談も含めて、先生のところへ相談に行って支えてもらいました。だからこそ学生たちには「いつでも質問していいよ」と授業の最後に必ず声をかけ、一人で悩まず相談してもらえる環境を作るよう心がけています。学生それぞれの成長のペースを大切にしながら、一緒に乗り越えていけるようサポートしたいですね。
▼今後の目標や将来のビジョンを聞かせてください。
私の音楽のテーマは「少数派に寄り添い、光を当てること」です。誰でも何かしらの苦手分野や環境によって少数派になる瞬間があります。私も少数派の立場になった時、誰にも自分の存在は見えないんだと孤独を感じたことがあります。そういう経験を素直に歌うシンガーでいたいし、物理的な距離を超えて、音に乗せて「1人じゃない」というメッセージを届けたいと思っています。
規模よりも距離感を大切にして、小さなライブハウスを満席にしながら日本全国を回れるミュージシャンを目指しています。将来的には世界を駆け回って音楽をしたいですね。

▼TSMを目指す中高生へメッセージをお願いします。
これは渋谷校校長である恩師の池末先生がおっしゃっていたことですが「全員がスーパースターになれるわけではありません」。それはビジネスや運に左右される部分も大きいからです。でも一つ確実に私が言えるのは、音楽を通して人生は絶対に豊かになるということです。
カラオケが好き、歌うことが好き、それだけでも十分です。将来音楽の道に進んでも、別の仕事に就いても、年齢関係なく人生のどの場面でも音楽と真剣に向き合った時間は一生ものの財産になります。音楽は私にとって「薬」のような存在。自分を救ってくれるものです。もし音楽をしてみたいと思っているなら、ぜひ挑戦してください。その経験は必ず、思いもしない形であなたの人生を豊かにしてくれるはずです。
【補足情報】
TSMでは、金子先生のように授業を担当している現役プロ講師が多数在籍しています。
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